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わたしはだあれ?

その肌は、野ざらしの髑髏(ドクロ)の色。
肩より長く垂れ落ちる髪は、乳酪(にゅうらく)のごとき白。
細面の美しい顔からのぞくのは、つり上がった憂わしげな深紅の双眼。
ゆるい黄色の袍(ほう)の袖口からあらわれた、ほっそりとした手もまた骨の色。
それが巨大なただひとつの紅玉から刻み出された玉座の、両の肘掛けに置かれていた。

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皇太子黄丹袍姿

 深紅の瞳は悩みを宿し、ときに片手がもたげられて、白い髪を飾る軽い兜のぐあいを直す。兜は濃い緑の合金から鋳造され、いましも飛び立とうと翼を広げた竜の姿を形取っていた。そして心在らざる風情でそれをまさぐる手には世にもめずらかなアクトリアス石の指輪があり、その石の深部には命ある煙のようなものがあって、紅玉の玉座に座す若き白子の王と同じく宝石の囚獄にとらわれながら、物憂げに、だが絶えず落ち着きなく身じろぎしていた。

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【皇室】悠仁さま初節句 両陛下が兜の贈り物
檜兜

 王は長い水晶のきざはしの下を見下ろした。そこでは冥界の宮廷のごとく、廷臣らがささやくような幽玄な踊りに打ち興じていた。王は物事の善否について、理非についてしきりと思いを巡らせていたが、そのことが彼をおおかたの臣民から確然と分かつものであった。そもそも帝国の民は人類ではなかったのである。

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能楽 - Wikipedia

 彼らは万年の長きにわたって世界に覇を唱えてきた<竜の島>の民であり、その栄華が傾いたのはようやくここ五百年ばかりのことである。種族の性は残忍にして犀利、彼らにとって善悪などは 百世紀になんなんとする伝統への崇敬にくらべれば、なにほどのものでもなかった。

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【海外の反応】 「日本の形は龍みたいだ」

 <竜の島>の初代魔術皇帝より数えて四百二十八代目の直系にあたるこの若者には、民のその性が単なる傲岸ではなく愚かさに思えてならなかった。<竜の島>が昔日の力の多くを失い、さらに喪失しようとしていることは明白である。一、二世紀も経てば、民が今はまだいささかの余裕とともに<新王国>と呼び習わしている新興人類の諸国とのあいだに、「あからさまな」軋轢が生じるのは必定であろう。すでに幾たびか海賊の船団が<竜の島>の首都たる<夢見る都>に、敵わぬながらも襲撃を試みていた。

f:id:guren004:20160911145212p:plainWorldmapper: GDP 1990

f:id:guren004:20160911145449p:plainWorldmapper: GDP 2015

http://gaagle.jp/gagazine/print.php?kiji_id=2509gaagle.jp

 しかし皇帝の側近中の側近でさえも、<竜の国>の没落などという話題はおくびにも出さなかった。主君がそれをほのめかすと渋い顔をし、そのようなことは考えられぬばかりか悪趣味の極みだと思惟した。

 

答えは下に ↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルリックでした。
マイクル・ムアコック著 本シリーズの初発表は1961年 当時22才)

世界のファンタジー・シーンに多大な影響を与えたと言われるエルリック・サーガ・シリーズ。その第一巻の冒頭シーンでした。この旧版のイラストがこの冒頭シーンそのものだったのですね。イラストはアニメーターから今やアーティストとなった、初期FFのキャラクターデザイナーでもある天野喜孝氏。

 

日本で出版された翻訳版の多くは天野喜孝がイラストを担当したが、日本版の表紙を作者であるムアコックは非常に気に入り、イギリス版のイラストを天野のものに入れ替えた。

エターナル・チャンピオンシリーズ(余談) - Wikipedia

だそうです。結構昔から本を持っているのに、この情報は知りませんでした。

 

新版はこちら。

メルニボネの皇子

 

まあ30代以上の趣味人ならかなりの人が知ってますよね…今の若い子は知ってるのか?

 <竜の島>メルニボネ帝国の栄光と没落の話を見聞きすると日本を少し連想してしまっていたのですが、袍(ほう)が何か分からなくて今回調べたところ、黄色の袍(袍服)というのは今の天皇や皇太子の礼服(御装束)なんだそうですね。旧版イラストでは薄いブルーですが本文はどうなんでしょう。旧版の第一巻も家のどこかに(何冊か)あるはずですが、探しても見つけらず確認できませんでした。最近叩かれていますがブックオフで安いのを見つけると、つい手を延ばしてしまうんですよねえ。。。